株式会社伸利 企画・構想段階から支援します。図面未完成でもご相談ください。 筐体・バスプレートなどの部品開発を支援します。代表が直接対応・スピード判断
ARTICLE / 標準記事

銅とアルミのバスバー選定|材料・コスト・調達・加工から考える伸利の提案


バッテリーパックのバスバー(BUSBAR)は、セルやモジュール間に電流を流す導体です。材料選定では、導電性だけでなく、搭載スペース、軽量化、接合方法、材料の入手性まで考える必要があります。本稿では、銅とアルミのメリット・デメリットを踏まえ、車載用途に限らず、用途に合った材料を選ぶためのポイントを解説します。

1.銅かアルミか――省スペースと軽量化から選ぶ

導体としての比較の出発点(概数)
項目 高導電性の銅 工業用純アルミ
導電率の目安 約100%IACS 約60%IACS前後。材種・質別による
密度の目安 約8.9g/cm³ 約2.7g/cm³
同じ長さ・同じ抵抗とした断面積 1 約1.67
上記条件での導体質量 1 約0.51
検討に向く条件 狭い空間、大電流、接合部を小さくまとめたい 断面積の増加が可能で、軽量化を重視する

IACSは焼なまし標準銅の導電率を基準とする表示 
銅とアルミの導電率・密度の比較及び、断面積比と質量比の算出元の概数は次を参照
Copper Information Center

例えば、銅で100mm²の断面が必要な条件を、同じ長さ・同じ直流抵抗のアルミへ置き換えると、断面は約167mm²≒1.7倍だが、材料質量は約半分
一方、同じ断面のまま置き換えると抵抗が増え、同じ電流では発熱は増加

※温度や接触抵抗を揃えた単純化による

2.銅バスバーの材料選びは、切断・曲げ・接合まで見据える

銅系ではタフピッチ銅C1100や無酸素銅C1020などが候補になります。電気伝導だけでなく、板厚、曲げ、打抜き、めっき、溶接・ろう付け条件を整理して選びます。海外資料のC11000は米国UNS記号であり、日本のC1100と記号体系が違うため、図面には適用規格も記載します。

銅は熱を逃がしやすい一方、接合時には熱が広がり、レーザーでは反射・吸収特性も工程設計に関わります。一昔前のレーザー加工機では反射光の問題で銅のブランクは基本NGでしたが、ファイバーレーザーの普及により対応設備では銅のレーザー切断も可能になっています。タフピッチ銅は酸素を含むため、水素を含む還元性雰囲気での高温接合では水素脆化への配慮が必要です。無酸素銅を含め、接合方式に適した材種を選びます。出典:Copper Development Association・バスバー用銅材料

3.アルミバスバーの軽量化は、接続部の設計とセットで考える

アルミは材料単体の軽さが魅力ですが、表面の酸化皮膜は電気接続・溶接に影響します。油分、水分、酸化皮膜の管理、接合前の保管、表面処理、入熱を工程条件に含めます。溶融溶接ではポロシティや変形も確認します。出典:TWI・アルミニウム合金の溶接性

ボルト接続では、締付け直後の抵抗だけでなく、温度サイクルに伴う軸力変化や応力緩和を検討します。銅とアルミの異材接続では、水分が関与する電食と、溶融接合で生じる金属間化合物が論点になります。接続面の処理、封止、クラッド材、接合方式の選定を部品設計と同時に進めます。

銅・アルミの接合界面と複合材の考え方については、TWIの異材バスバー開発事例が参考になります。同じ電流を流すための断面増加、支持部品、締結・接合費、絶縁処理、歩留まりまで含めた完成部品の質量とコストで比較することが必要です。

4.銅・アルミの材料コストを、地金相場と調達条件から考える

昨今のインフレ基調によるコスト見直し要請や、見積りの根拠として、最近では地金相場がより身近になりました。部品コストの根幹となる銅とアルミの地金相場を、同じ基準で比較するため、世界銀行「Pink Sheet」の国際地金相場を用い、銅はLME Grade A、アルミはLME高品位一次地金の系列を使用、単位は米ドル/メートルトンです。
※日本国内の銅建値、アルミNSP、圧延板の購入価格とは異なる

直近36か月を12か月ずつ比較した平均値(US$/t)
集計期間 銅 アルミ
2023年9月~2024年8月 8,812 2,302
2024年9月~2025年8月 9,401 2,551
2025年9月~2026年8月 12,477 3,153

※公表月次値12個の単純平均を四捨五入、暦年平均ではない
2023年9月から2026年8月までの月次値の始点・終点比較では、銅は8,277から14,326US$/tへ約73.1%、アルミは2,185から3,251US$/tへ約48.8%上昇しています。

期間中は一方向に上昇したわけではありません。2024年春の上昇後に反落する局面があり、2025年後半以降は銅の上昇が目立ちます。アルミも2026年春に上昇した後、夏には反落しています。購買判断では、ある1日の価格だけでなく、量産開始時期を見据え見積時点と価格改定条件を合わせて確認する必要があり、車載向けで次期モデルのコスト算出をする場合には複雑な事情があります。

出典:世界銀行・月次履歴データ(2026年9月2日更新)、2026年9月版Pink Sheet。公表月次値から伸利記事用に集計。

直近36か月の月次相場を表示する
月次平均:US$/t(世界銀行、2026年9月2日更新)
年月 銅 アルミ
2023-09 8,277 2,185
2023-10 7,937 2,192
2023-11 8,190 2,202
2023-12 8,400 2,182
2024-01 8,339 2,193
2024-02 8,305 2,179
2024-03 8,689 2,226
2024-04 9,464 2,506
2024-05 10,139 2,565
2024-06 9,648 2,498
2024-07 9,385 2,349
2024-08 8,972 2,344
2024-09 9,237 2,450
2024-10 9,534 2,596
2024-11 9,076 2,582
2024-12 8,916 2,541
2025-01 8,991 2,573
2025-02 9,331 2,658
2025-03 9,740 2,658
2025-04 9,177 2,372
2025-05 9,533 2,449
2025-06 9,835 2,526
2025-07 9,771 2,606
2025-08 9,670 2,597
2025-09 9,984 2,653
2025-10 10,740 2,793
2025-11 10,812 2,819
2025-12 11,785 2,876
2026-01 13,012 3,142
2026-02 12,951 3,065
2026-03 12,529 3,373
2026-04 12,951 3,600
2026-05 13,543 3,666
2026-06 13,552 3,439
2026-07 13,543 3,161
2026-08 14,326 3,251

同じ電気抵抗で比較する、銅とアルミの材料費

第1節で説明したとおり、銅で100mm²の断面が必要な条件を、同じ長さ・同じ直流抵抗のアルミに置き換えると、必要な断面積は約167mm²になります。一方、アルミは密度が小さいため、材料質量は銅の約0.51倍です。

地金価格は重量当たりの単価なので、この質量比を使って材料費を比較します。2025年9月~2026年8月の平均価格は、銅が12,477US$/t、アルミが3,153US$/tです。

銅を1kg使用する部品に対し、アルミを約0.51kg使用する場合の材料費は、次のようになります。

  • 銅:12.477US$/kg × 1kg = 約12.48US$
  • アルミ:3.153US$/kg × 0.51kg = 約1.61US$

この条件では、銅の材料費はアルミの約7.8倍になります。

※記事掲載の地金価格と概数による比較です。圧延・切断・曲げ・接合などの加工費、材料の歩留まり、調達条件は含みません。完成品のコストは、これらを含めて比較する必要があります。

完成品のコストは、材料費・加工費・発注条件で決まる

卸問屋からの材料費、切断・プレス費、めっき・接合費、最小発注量、支給材や総量によりスクラップ回収条件などが加わります。アルミは必要断面積が増えるため、kg単価だけで完成部品のコスト差は決まりません。比較見積は、必要抵抗・数量・納入仕様・価格適用日を揃えて行う必要があります。

国内で買える材料が、海外の量産拠点でも買えるとは限らない

国内では入手可能な無酸素銅C1020は、中国華南地区では入手困難との情報があります。(伸利調べ)かつてはアルミA6061とA6063で、地域によって棒とパイプの入手性が逆、という事もありました。量産をどの国・地域で行うかによって入手性が変わる可能性があるので、注意が必要です。

5.導電性・加工性を重視するなら、A1000系アルミから検討する

A1000系は工業用純アルミの系列で、合金元素が多い他系統の高強度アルミに比べ、導電性・熱伝導性・成形性を重視する用途に適しています。A1050はアルミ純度99.5%以上、A1070は99.7%以上、A1100とA1200は99.0%以上です。

A1050・A1070は高い導電性を重視する候補、A1100は導電性に加えて調達性や加工を含めて検討する候補です。実際の導電率は化学成分と加工状態で変わるため、必要なら導電率の保証条件を材料注文に含めます。参考:アルミテック・純アルミ板の特徴/阪根商事・A1050の特性

A1000系の課題は強度です。長い自由長、締結座面、振動荷重がある場合は、支持間隔、断面形状、質別を調整します。A1000系は有力な出発点ですが、導電率と強度の要求によっては他系列や複合構造も比較します。

導電性に加えて強度も必要な場合は、高機能アルミニウム合金板も候補になります。例えば、堺アルミの「ST60シリーズ」は、熱伝導性・導電性と強度の両立を図った材料で、「ST60-HSM®」はメーカーが用途例にバスバーを挙げています。

ST60は板材として供給される製品です。材料選定では、組成の共通性だけでなく、製品ごとの質別や機械的性質、導電性、加工性を確認することが大切です。

伸利では、A1000系の純アルミ板に加え、こうした材料も視野に入れ、必要な導電性・強度と、加工方法・調達条件を合わせて検討します。

参考:堺アルミ株式会社「高熱伝導/高導電性/高強度アルミニウム合金板」

6.必要な形状・質別で入手できるか――アルミ材料の調達を確認する

バスバー用途に都合の良い板で流通しているかも選定基準になります。下記はその例です。(伸利調べ)
A1050:板、丸棒、パイプ
A1070:板、丸棒、パイプ
A1100:板
伸利が確認した調達先では、A1100は主に板材として取り扱われています。

次表は国内供給者の公開取扱表で確認した組み合わせです。「P」は板の製品形状を表します。在庫・製作可否は板厚、幅、長さ、数量、時期で変わるため、公開掲載は即納保証ではありません。

国内公開カタログで確認できる板材・質別の例
材種 確認できた質別 公開供給情報と用途上の注意
A1050P O、H24、H112 WITH COPPERのサイズ表に掲載。薄板・厚板で質別と寸法の組み合わせが異なる
A1070P O、H112 WITH COPPERにO材、泰生工業にH112厚板の掲載。高純度候補でも希望薄板寸法の確認が必要
A1100P O、H24、H14 WITH COPPERに生地材などを掲載。アルマイト品も含まれるので、導電・溶接部には表面仕様を明記
A1200P O 島貫金属工業の円板(サークル材)に掲載。長方形の定尺板と同じ調達性とは扱わない

出典:WITH COPPER・A1050P/A1070P/A1100Pサイズ表、泰生工業・A1070P、島貫金属工業・アルミサークル材。

A1050・A1100――必要な質別と実際に買える板材を照合する

アルミニウム板材のJIS規格は、JIS H 4000:2014「アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条」です。この規格には複数の質別が掲載されていますが、すべてが希望する板厚・寸法で入手できるわけではありません。圧延メーカーは各質別の機械的特性や市場要求及び需要により作り分けをしています。質別による特性と実際に調達できる材料は分けて確認する必要があります。下表は、JIS H 4000:2014の質別と、A1050・A1100の入手性情報を合わせたものです。(伸利調べ)

A1050・A1100|質別別の板材入手性
質別 A1050 A1100
H112 板あり 板あり
O 板あり 板あり
H12 未確認 未確認
H22 未確認 未確認
H14 未確認 板あり
H24 板あり 板あり
H16 未確認 未確認
H26 未確認 未確認
H18 未確認 冷間圧造なら可能

※板厚により入手できる質別が変わります。詳しくはお問い合わせください。

7.O材とH24の選び方――加工しやすさと溶接後の強度を確認する

O材は焼なましにより軟らかくした状態です。H24は加工硬化後に部分焼なましを施した状態で、末尾の4は半硬質を示します。H14も半硬質ですが、加工硬化のみで調整するため、H24とは製造履歴が異なります。同じ材種・半硬質でも耐力や伸びが完全に同じとは限りません。出典:日本アルミニウム協会・質別の解説

同じ材種・板厚で比較するO材とH24
比較項目 O材 H24
接合前 低強度で延性が高く、塑性変形しやすい O材より強度が高く、母材形状を保ちやすい
溶融溶接の熱影響 加工硬化の消失による相対的な強度低下は小さい。ただし溶接部品質は別に評価 熱影響部の加工硬化が失われ、局所的に軟化する。H24母材の強度を接合部へそのまま適用できない
溶接性の判断 軟らかさだけで欠陥が減るとは断定できない H24だから溶接できないわけではない
評価項目 接合抵抗、引張・せん断・剥離、断面、気孔、疲労、温度サイクル後の抵抗と強度

同じ合金なら、O材とH24の違いは主に加工履歴と機械特性です。酸化皮膜や水分の管理が不要になるわけではありません。TWIも、非熱処理型アルミの加工硬化が溶接熱で失われ、熱影響部が軟化することを説明しています。出典:TWI・非熱処理型アルミの溶接

レーザー、抵抗溶接、超音波接合では、入熱と変形の仕方が違います。上の熱影響部の説明は主に溶融溶接を想定したもので、「O材の方が常に溶接性に優れる」という順位には置き換えられません。特にセル端子との接合は、端子材・板厚・表面処理を揃えて試験します。

8.バスバーの材料選定から試作・量産準備まで、伸利にご相談ください

狭いスペースで抵抗と発熱を抑えたい場合は銅を、断面を確保できて軽量化を狙う場合はA1000系アルミを比較します。

試作では「通電できた」で終わらせず、接続部を含む温度上昇と抵抗、強度、温度サイクル・振動後の変化を確認します。その結果から板厚、質別、接合方法、表面処理を調整し、量産の調達仕様へつなげます。

伸利では、銅・アルミの比較、板金・プレスの工法検討、溶接・めっきの工程調整、試作・評価先の選定を支援します。必要電流、使用温度、搭載スペース、相手端子の材質、数量、希望時期をお聞かせください。

バスバーの材料・加工・接合を相談する →

部品開発を無料相談